健康アドバイス(アーカイブ)

依存(4)~ギャンブル依存症~

ギャンブル依存症は病気なのです

ギャンブルを楽しむことは、趣味嗜好のひとつですから、基本的には人それぞれの生き方、ライフスタイルの問題です。問題なのは抜け出せずハマりすぎてしまった場合でしょう。

世界保健機関(WHO)は1980年にギャンブル依存症を病気に認定しました。正式な診断名を「病的賭博」といい、症状としては「明らかな合理的動機を欠く」「患者自身および他の人々の利益を損なう」「行動の反復性」「統制できない衝動に関連づけられる」などがあります。いまでは精神科もしくは心療内科での治療の対象になりました。

「病的賭博」は実はなかなかやっかいな病気です。ギャンブルに興じる人たちは、もちろん勝って大金を手に入れたいという思いがあるわけです。しかし、それ以上にスリルを味わいたいという人や一度勝った喜びをもう一度味わいたいという人が大半ではないでしょうか。つまり、慢性疾患なのです。

スリルが欲しいのは、心に空虚感や欲求不満を抱えているからです。それを解放させるために、ハレとケ(日常と非日常)という区別をつけて、ハレの時に好きなことに集中するというのは、むしろ健全なことでしょう。例えばお祭りのように。それが依存症にまで進んでしまうのにはプラスαのヒミツがあるのです。

「身近にある」パチンコは依存症のリスクが高い

日本でのギャンブルは競馬や競輪といったレース系ギャンブルか反復系キャンブルのパチンコに大別されると思います。ほかに大きなものとしたら意外な感じがするかもしれませんが、宝くじがあげられます。ギャンブルの原則として、胴元が儲かるシステムになっていますから、大部分は損をします。

その中でレース系のギャンブルにハマる人の場合、多くは誰かと一緒に熱狂したいという気持ちがあるのでしょう。大勢の人と一緒に競馬場や場外馬券場に足を運び、スリルを味わえば、賭けた馬が勝つと嬉しいし、儲かれば無数の参加者がいるから勝った優越感にも浸れます。しかもレースが終われば全員一緒に終わりますので、オン、オフがあります。

一方、パチンコは台とにらめっこするだけなので、思考を停止できるし、誰かと経験を共有することもできません。また、毎日パチンコ店はオープンしているため、いつでも足を運ぶことができるお手軽なものです。自分が止めてもとなりの人はその後もずっと続けているかもしれませんので、隣の台が気になりだすと、オン、オフがハッキリしなくなります。

レース系ギャンブルが興奮も落胆した感覚も共有できるギャンブルだとすると、パチンコは内向き個人技のギャンブルだと言えます。

そして依存症の観点から言えば、パチンコのほうが危険性は高いと言わざるを得ません。お手軽だということは、参加の敷居が低いということです。ギャンブルにハマることで人生が不幸になるという捉え方をするのならば、身近にあるということはリスクが高いのです。

心の隙間を埋めてくれる安全な娯楽を持とう

実はギャンブルを勝ち負け関係なく、楽しみの道具であると考えてしまうことが一番危険なことなのです。それはおカネという有限の資源の使い方を理性的に判断できていないということだからです。ギャンブルはスリルや興奮をもたらしてくれますが、その興奮をまた繰り返し得ようとすると、ハマったという状態になります。依存症ですね。ギャンブルは負けることが多い遊戯です。それは満足できない結果のほうが多いということにつながります。満足できないと新たな欲求不満が生まれます。楽しみのためにやっているのに、いつの間にか負けておカネを失うだけではなく、負けてしまうということ自体に新しい欲求不満が生まれてしまっているのです。

その結果、借金をしたり、家庭内不和が起きたり、不満や借金をしているという脅迫的な不安感が募り精神病を患ってしまうということにもなりかねません。

しかしギャンブルユーザーは昔より減ったと言われています。それはギャンブル以外にももっと安全にスリルを味わえる娯楽が増えたからでしょう。それは海外旅行でも、ゲームでも、ランニング・ハイをもたらすようなスポーツでもありえます。別な見方をすれば文化の多様性化でもあります。

安全な楽しみ、娯楽を持てないということは、ストレスを解消する手段を持てないということでもあります。趣味を持つというのは、生きて行く上で、重要な要素なのです。

今回はギャンブル依存症のチェックリストを紹介します。

自分や身内の方が依存症ではないかと思われた方は一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

ギャンブルに関する10の質問
(自己診断チェックリスト~北海道立精神保健福祉センター作)
  • ギャンブルのことを考えて、仕事が手につかなくなる
  • 自由なお金があると、まず第一にギャンブルのことが頭に浮かぶ
  • ギャンブルに行けないことでイライラしたり怒りっぽくなる
  • 一文無しになるまでギャンブルを続けることがある
  • ギャンブルを減らそう、止めようとして努力してみたが、結局だめだった
  • 家族に嘘を言って、ギャンブルをやることがしばしばある
  • ギャンブル場に知り合いや友人はいないほうが良い
  • 20万円以上の借金を5回以上したことがある、あるいは総額50万円以上の借金をしたことがあるのにギャンブルを続けている
  • 支払い予定のお金を流用したり、財産を勝手に換金したりし、ギャンブルに当て込んだことがある
  • 家族に泣かれたり、固く約束させられたことが2度以上ある
3〜4個:要注意。ギャンブルの楽しみ方を今一度見直しましょう。
5個以上:病的ギャンブラーの可能性が極めて高いです。一度病院に相談してみましょう。

(取材・島田 健弘)

日本精神科看護技術協会会長
天理医療大学準備室 教員
末安民生 先生