健康アドバイス(アーカイブ)

メタボ検診で何が変わったか 健康で長生きするために

メタボ検診の受診率は目標を大きく下回った

メタボ検診がスタートし、1年がたちました(スタートは2008年4月)。メタボリックシンドロームという言葉は一般化しましたが、実際のメタボ検診の受診率は、芳しくありません。

メタボ検診は40歳から74歳までの人を対象にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)かどうかを調べる特定健康・特定保健指導の通称です。メタボリックシンドローム該当者、または予備軍と判定された場合には、医師、保健師、管理栄養士などから保健指導を受けることが義務づけられました。

国は市町村国保について、2012年度の特定検診の受診率を65%、特定保健指導の実施率を45%とする目標を設定しました。これが達成できないと75歳以上の医療費(後期高齢者医療)の負担が最大10%増すことになっています。

このペナルティーがあるため、各自治体は必死になって受診率を上げようと努力していますが、現実には受診率の全国平均(2008年11月末時点)は28.8%にとどまっているのです(厚生労働省 第9回「健康日本21推進国民会議」資料)。

メタボリックシンドロームが進むと、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化疾患、腎障害、神経障害などの重篤な疾患を引き起こします。これを防ぐ一番の対策は予防であり、そのためにメタボ検診をスタートさせたのです。特に日本人の場合、隠れ肥満というような、小太りでも容易に糖尿病になってしまう体質を持っているため、欧米よりも厳しい検査基準が課せられています。

厚生労働省が定めた腹囲の基準は男性85センチ、女性90センチです。詳しいメタボ検診の流れは第一章「メタボリック症候群の定義」で紹介していますが、これらの基準を超えた40歳以上の成人はメタボ指導を受け、予防を心がける必要があるということです。

しかし、前述のようにメタボ検診の受診率は目標を大きく下回っています。これらを上げるために、国、自治体、企業、医療機関が揃ってさまざまなPR活動をする必要があるでしょう。

医療機関に行かずとも、常にセルフチェックは欠かさずに

メタボリックシンドロームを解消するには生活習慣の改善が第一です。この連載でも何度も説明してきましたが、生活習慣の改善は大きく3つにわかれます。

1 食事に気をつける

  • 腹八分目を心がける
  • 塩分は1日6g未満に抑える

2 運動する

  • 1日20分以上おこなう
  • 毎日続ける
  • できるだけ昼間におこなう

3 嗜好の制限

  • 喫煙は止める
  • アルコールは適量を守る
  • 入浴はぬるめのお湯で

その上で、40歳以上の方は検診するだけでなく、可能なら自己チェックもするといいでしょう。血圧計と身長、体重、体脂肪率などを測定できる体重計を購入することをお勧めします。

家庭で血圧をはかる場合、精神的な緊張感が少ないため、医療機関ではかるよりも通常は低い値になります。家庭血圧の場合は収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上で、高血圧と診断します。

体重計はBMI指数を確かめ、ご自分の肥満度をチェックするのに利用しましょう。BMI指数は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算し、25以上を肥満としています。

医療機関に行かずとも、常にセルフチェックをおこなうことで、自分の健康状態を確認できますし、常に健康への意識を保つことができるのです。

年に1回は健康診断を受けましょう

メタボ検診がスタートして、来院する患者さんだけでなく、私の周囲で多くの人が肥満(メタボリックシンドローム)を気にするようになりました。その意味では、受診率が低くても意識は大きく変わったといえます。

ただ、人間は年を重ねるごとに体中にガタがくるようになります。肩こりや老眼など目に見える衰えだけでなく、血管などの臓器も同じことがいえます。50歳を超えるころになると多くの人が高血圧になっていきます。

注意すべきは、血圧、BMI指数、腹囲基準です。もちろん、日本には隠れ肥満も多く、この3つのチェックだけをしておけば、生涯健康というわけではありません。そのため、セルフチェックだけでなく、年に一回程度は地元の医療機関に行き、しっかりと健康診断を受けるようにしてください。

そして、国民全員がQOL(Quality of Life=生活の質)を向上させ、健康で長生きできる一生を送れることを、私たちは願っています。

(取材・島田 健弘)

国立国際医療センター循環器科 医長
樫田光夫 先生