健康アドバイス(アーカイブ)

メタボからつながる病気「狭心症」その2 狭心症の治療法

治療の基本は薬物療法

狭心症の治療は、「薬物療法」が基本です。それにバランスのよい食事、規則正しい生活、適度な運動を心がけることが必要です。ただし、狭心症の狭窄具合によっては「カテーテル治療」や「バイパス手術」などを行うケースもあります。

労作時狭心症と診断されたら、冠動脈の狭窄部を広げて血流を改善する必要があります。治療法は冠動脈の狭窄の程度や、狭窄している部位によって変わります。冠動脈の狭窄が軽い場合や外科的治療が困難な場合には、薬物療法での治療となります。冠動脈が75%以上狭窄し、狭窄部が1~2ヵ所の場合はカテーテル治療を行います。狭窄部が3ヵ所以上や左冠動脈の根元が狭窄している場合にはバイパス手術となります。

また、安静時狭心症では、冠動脈のけいれんを鎮めるための薬物療法がとられます。

冠動脈の狭窄の程度によって治療法は変わる

それぞれの治療法

薬物療法

狭心症の薬物療法には「発作を鎮める薬」と「発作を予防する薬」があります。どちらも血圧を下げますから、高血圧の治療薬としてもよく使われます。

「発作を鎮める薬」は、冠動脈を広げて血流をよくする働きと、全身の血管も同時に広げて心臓の負担を軽くする働きがあり、主に「硝酸薬(ニトログリセリン)」が処方されます。ニトログリセリンは舌下錠ですので、持続時間が短くせいぜい30分ほどしか持続しません。これは応用治療にしかならず、根本治療にはなりません。毎日ニトログリセリンを舌下するというのは、あまりおすすめできない治療法といえます。

「発作を予防する薬」は、興奮する神経である交感神経の活動を抑え、血圧を低くし、脈拍数も少なくして、心臓の負担を軽減する薬です。血圧を下げる薬、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪の量を減らし動脈硬化を防ぐ抗高脂血症薬、血栓ができるのをふせぐ抗血小板薬などがあります。

カテーテル治療

大腿部の付け根や腕などの動脈から先端にバルーン(風船)のついたカテーテル(細い管)を冠動脈に送り込み、狭窄部でバルーンをふくらませ、動脈を広げる「ステント治療法」が一般的な治療法です。ほかに冠動脈の狭窄部を削り取る「ローターブレーター」といった治療法もあります。

バイパス手術

狭窄を起こしている冠動脈とは別の部位(足の静脈、心臓の周囲にある左右の内胸動脈、胃大網動脈など)の血管をバイパスとして使い、狭くなった部分を迂回してつなぐことで血液の流れをスムーズにする治療法です。これまでは心臓をいったん停めて人工心肺を使用して手術をしていましたが、近年は心臓を動かしたまま行う「オフポンプ手術」のほうが、予後の心臓の状態も安定するため主流になっています。

治療費は総額の3割。自己負担額が高い場合は高額療養制度を利用する

狭心症をはじめ心臓病の治療には高度な技術が必要であり、さまざまな検査も行うために治療費が高額になります。

心臓病の疑いで診察を受ける場合は、胸部レントゲン検査、心電図検査、血液検査などを受け、ほかに特別な検査を行わなければ医療費の3割負担(国民健康保険を適用)により4,000~5,000円くらいほどとなります。しかし、検査時にCTなど高度な検査を行った場合はより高額になることがあります。

カテーテル治療やバイパス手術となると、治療費は高額になります。心臓カテーテル検査には平均207万670円、冠動脈・大動脈バイパス手術では459万5,000円かかります(社団法人全日本病院協会調査)。ただし、健康保険が適用されるため実際に負担する額は総額の3割になります。さらに医療保険では突然の医療費負担が家計を圧迫しないように、一定の自己負担額を超えた分(自己負担額の上限は所得によって決められています)は後から払い戻される高額療養費制度が設けられています。この制度を利用すれば、申請の3ヵ月後に払い戻されます。

狭心症は命に関わる病気です。年をとれば、体の各器官に異常が起こるのはごく当たり前のことです。治療費を気にする前に、40歳以上になったら毎年一度は必ず検査を受けるようにしてください。

(取材・島田 健弘)

国立国際医療センター循環器科 医長
樫田光夫 先生