健康アドバイス(アーカイブ)

メタボからつながる病気「狭心症」その1 突然死を招く狭心症

突然死の恐れのある狭心症

坂道や階段を上ったり、早足で歩くなどをして体を動かしたときに胸に不快な痛みを感じる――。これは「労作時狭心症」という症状の典型です。「労作時狭心症」は心臓の冠動脈が動脈硬化を起こして内側が狭くなることで、その先の心筋に十分な血液がいかなくなり、心筋が酸素や栄養不足となり、一時的に機能が低下してしまうことから、胸が圧迫されるような痛みに襲われるのです。誘因としては高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、高尿酸血症、加齢、喫煙、ストレスなどがあり、メタボリックシンドロームと診断された方は特に注意が必要です。

狭心症の痛みはみぞおち、あご、咽喉、左肩、腕、背中、胃、歯などにも現れることもあり、数分から15分ほどで自然に収まるのが一般的です。また、動悸、不整脈、呼吸困難、頭痛、嘔吐などの症状を伴うこともあります。狭心症は放置したままにしておくと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、心室細動などを引き起こし、突然死を招く恐れもあります。冷や汗を伴う痛みや痛みが30分以上続くようでしたら、すぐに病院で受診してください。心筋梗塞の疑いがあります。

12月から3月にかけての冬場になると、心筋梗塞で亡くなる狭心症の患者さんが増加します。寒い場所では体温が奪われないように血管が収縮するのと同じように心臓の血管も収縮するため、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなるからです。

2タイプある狭心症

狭心症には、上記にあげた「労作時狭心症」と「安静時狭心症」があります。

  • 「労作時狭心症」
  • 「安静時狭心症」

「労作時狭心症」は前述の通り、加齢による血管の老化、食事などの不摂生、喫煙、運動不足などで進行する動脈硬化が要因で、体を動かしたときに症状が現れます。

一方、「安静時狭心症」は安静時に発作が起こります。冠動脈のけいれんによって血管が収縮して心筋に血液が回らなくなるケースと動脈硬化などで冠動脈の狭窄が進み、心筋に血液がまわらなくなるケースがあります。

後者のケースの場合は特に気をつけてください。「労作時狭心症」の方が睡眠中などの安静時にも狭心症特有の胸の痛みを感じた場合は、冠動脈の動脈硬化が致命的なレベルにまで進行している可能性があり、急性心筋梗塞や突然死などの恐れもあるからです。

冠動脈は睡眠中や夜間、早朝などにけいれんを起こしやすいといわれます。深酒をして眠ると、けいれんが誘発されることがありますので、できるだけ就寝前の飲酒は控えたほうがいいでしょう。

また、女性は女性ホルモンの働きによって、男性より狭心症になりにくい体質を持っていますが、閉経後は動脈硬化が進みやすくなります。70歳前後になると発症の危険性は男女ほぼ同じになるといわれます。

また、最近は運動不足、肥満、生活習慣などの影響で30代でも狭心症の疑いのある方も増えてきました。これまでにない不快な胸の痛みや強い痛みを感じたら、すぐに病院で検査を受けるようにしてください。

狭心症の検査

狭心症の検査は次のようなステップで行います。ここでは代表的な検査法を紹介します。

狭心症の検査法

ステップ1 事前検査

1)問診

いつ、どのような場合に、どこに症状が起きるか、痛みはどれくらい続くのか、などのほか持病や心臓病に罹った家族がいないかなどが問われます。心拍数や血液の流れなどの聴診や血圧測定も行います。

2)心電図検査

安静時の心電図を調べ、心臓の拍動の状態や病気の有無を検査します。過去に心筋梗塞を起こしていたかもこの検査でわかります。

ステップ2 心臓の異常が疑われたときに行う検査

「心エコー検査」

超音波で心臓の状態を映し出す画像検査で、心臓の弁、構造、大きさ、壁の動きなどを調べ、心臓のどこに異常があるかを検査します。

「運動負荷試験」

運動によって狭心症を起こしやすくして、心電図に現れる変化を調べます。「労作時狭心症」の疑いがあるときに行われます。

「ホルター心電計」

携帯型の心電図を24時間装着して、運動時や睡眠中の発作などを検査します。「安静時狭心症」が装着中に起こると独特の波形が記録でき診断に役立ちます。

ステップ3 治療方針を決めるために行う検査

「MDCT」

マルチスライスCT(コンピュータ断層撮影)。検出器を増やし、従来のCTスキャンより撮影時間が短くなり、動いている臓器である心臓の血管の動脈硬化の診断も行えるようになりました。心臓を中心に撮影すると、冠動脈に狭窄があると高い確率で診断できます。「循環器科」を標榜している病院には、ほぼ設置されています。

「運動負荷心筋シンチグラフィー」

心電図検査より更に詳しい検査で、心筋に集まりやすい薬剤を注射し、安静時と労作時の心臓の状態を特殊なカメラで撮影します。冠動脈が心筋にどのように血液を送っているか、心臓の筋肉のどの部分に血液のめぐりが悪いかがわかります。運動後と安静時の2回撮影するため、検査は4時間ほどかかります。

「カテーテル検査」
以上の検査で狭心症が強く疑われる場合に行う検査です。直径2mmほどの細い管(カテーテル)を手首や足の付け根の動脈から心臓まで送り込み、造影剤を注入して、冠動脈を撮影します。冠動脈がどこで、どの程度狭くなっているかがわかり、治療方針を決定するのには欠かせない検査です。

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(取材・島田 健弘)

国立国際医療センター循環器科 医長
樫田光夫 先生