健康アドバイス(アーカイブ)

メタボからつながる病気「高脂血症」

高脂血症には自覚症状がない

高脂血症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪といった脂質が正常値を超えて異常に多くなっている状態をいいます。一般に血中の総コレステロール値が220mg/dl以上の場合を指します。健康診断や献血などでこの数値が出るようでしたら、一度、医師に相談するようにしてください。

血中の脂質が増えると血液の粘り気が増します。この状態が長く続くと血管内壁に脂質が沈着し動脈の壁が厚く硬くなり、動脈硬化となっていきます。

高脂血症には自覚症状がないため、健康診断などで発覚しても、そのまま放置してしまうケースがよくあります。そのため、手足のしびれや動悸などの自覚症状がでた時には、すでに手遅れになっている場合もあります。なぜなら、心臓や脳、下肢の動脈硬化が相当進行してしまっているからです。こうなってしまうと、突然、脳梗塞のような脳動脈疾患や狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患が襲う危険性も大いにあります。

悪玉コレステロールが問題

高脂血症は血液中に多い脂質の種類によって3つのタイプがあります。

(1)コレステロールが高いタイプ
(2)中性脂肪が高いタイプ
(3)両方とも高いタイプ

中でも気をつけなければならないのは、(1)のコレステロールが高いタイプです。特に悪玉コレステロール(LDL)が高いと要注意です。動脈硬化は血液中のLDLが多すぎることが一番の原因になるからです。血液中にLDLが長い間とどまっていると、LDLに糖が結合したり、活性酸素によって酸化されたりして、変性LDLになります。変性LDLは血管の壁を傷つけ、動脈硬化を促進させたり、血栓を作りやすい体質にするのです。

中性脂肪は直接動脈硬化の原因になることはありません。しかし、中性脂肪が多いと善玉コレステロール(HDL)が減ってLDLが増えやすくなります。そのため、次第に(3)のタイプとなっていきます。(3)のタイプは高脂血症に加え、肥満、高血圧、糖尿病予備軍(境界型を含む)の危険因子を持っている人が多いため、正常な人よりも脳卒中や心筋梗塞などの死にかかわる病気を発症するリスクが正常な人の30倍以上になるといわれています。

また、高脂血症ひとつを見ても、血液中の総コレステロールが220mg/dl未満の人に比べて、総コレステロール値が300mg/dl以上の人は狭心症、心筋梗塞などにかかる率が約4倍にも高くなることがわかっています。

生活習慣を見直そう

高脂血症の治療は生活習慣の改善と薬物療法が基本です。生活習慣の改善は食事の改善と運動をし、喫煙者は禁煙を心がけてください。タバコを吸うと血液中のコレステロールが酸化され、HDLの濃度が低くなります。その上で、自分の一日に必要なトータルの摂取カロリーを知り、適正体重を維持することです。

「1日の適正エネルギー摂取量」=標準体重(kg)×活動量(kcal)
軽労働の活動量:25~30kcal デスクワークや育児のない専業主婦など
中労働の活動量:30~35kcal 製造・加工・販売・サービス業、自営業者、育児中の主婦など
重労働の活動量:35~40kcal 建設業、農業、林業、水産業などの肉体労働

※標準体重=身長(m)×身長(m)×22

上記の計算で算出した適性カロリー摂取量にしたがって、次のような食事内容を心がけてください。

コレステロールの多い食品を控える。

卵黄・レバー・ベーコン・たらこ・すじこなど。

コレステロールの吸収を抑える働きのある植物繊維の多い食品を多くとる。

いも・豆類・野菜・きのこ・海藻類。

身体の酸化を防ぐ効果のあるビタミンA・C・E、葉酸、ポリフェノールを多くとる。

緑黄食野菜(ビタミンA)、野菜類(ビタミンC)、植物油・種実類(ビタミンE)。ポリフェノールは春菊、レンコン、バナナ、マンゴー、ブドウなどに多く含まれています。

コレステロールや中性脂肪を低下させる作用のある大豆製品や青魚を多くとる。

大豆・納豆・豆腐・いわし・さんま・さばなど。

運動はウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を中心に1日30分以上、週3回以上を目指しましょう。

これらの生活習慣を身につけることは、高脂血症の治療だけでなく、まだそうと診断されていない方でも予防に役立つので、40歳を超えている方は心がけてください。

高脂血症は薬でのコントロールがしやすい

これらの生活習慣の改善でも血液中の脂質の量が目標値にならない場合は薬物による治療が必要です。一般の高脂血症の場合、食事療法を3~6ヵ月続けてもコレステロール値や中性脂肪値が下がらない場合に薬物療法に入ります。

高脂血症の場合、糖尿病に比べ、薬でコレステロール値を下げられるのでコントロールがしやすいという特徴があります。しかし薬を飲むことで安心して、生活習慣が乱れたり運動を怠ったりするようでは、いつまでたっても危険はなくなりません。運動、食事療法を続けることで、肥満は糖尿病などの多くの生活習慣病も回避できます。ぜひ続けるようにしてください。

(取材・島田 健弘)

国立国際医療センター循環器科 医長
樫田光夫 先生