本気で怖いメタボの話

樫田光夫 先生

このところメディアでメタボリック症候群の話題が取り上げられない日はありません。メタボリック症候群の先にはどんな病気が心配されるか、そしてどのように予防するのかなど、最近の話題を取り入れながら、「本気で怖いメタボの話」をテーマに専門家の立場から説明をしていただきます。

国立国際医療センター
循環器科 医長
樫田光夫 先生

第七章 メタボからつながる病気「心筋梗塞」

心筋梗塞を発症すると約3割が病院にたどり着く前に死亡する

前回説明した狭心症は、冠動脈が動脈硬化によって閉塞や狭窄などを起こし、心筋へ血液が十分に送られなくなり心臓に障害が起こる「虚血性心疾患」のひとつです。心筋梗塞もそのひとつです。

心筋梗塞は狭心症以上に恐ろしい状態といっていいでしょう。動脈硬化が進み、血管が完全にふさがってしまうと、その部分の心筋組織は壊死してしまいます。この時、激しい発作と胸の痛みが起こります。この状態が心筋梗塞です。発作の痛みは狭心症と異なり、30分以上続きます。激しい痛みのため、吐気、息切れ、鳩尾(みぞおち)の痛み、胸部の痛み、動悸、歯、左肩や腕等に痛みが出たり、冷や汗や生あくび、吐き気、腹痛、足のむくみ、寒気などを引き起こします。また、激痛もないまま、立ちくらみがして急に意識不明になる場合もあります。

日本での心筋梗塞の発症数は年間約15万人と言われています。そして、その約3割が病院にたどり着くこともできずに死亡しているのです。さらに、心筋梗塞を発症した7割の人はある日突然発症しています。ですから、狭心症の症状がないから、心筋梗塞は起きないと考えるのは危険です。心筋梗塞は予測不可能と思い、日ごろから食事や運動に気をつけ、タバコや酒などを控え、動脈硬化の進行を遅らせることが大切なのです。

現在では、心臓疾患に関しては全国にCCU(Coronary Care Unit=冠状動脈疾患管理室)と呼ばれる冠状動脈疾患の集中治療室を備えている拠点病院が設置されています。東京には60ヵ所以上あり、これらの整備により、病院にたどり着いてからの死亡率は5%にまで下がりました。

普段から心臓の専門医のいる病院を調べておいて、いつもとは違った症状があればためらわず救急車で医療機関に駆けつけるようにしておきましょう。

突然の心疾患に対処するためのAED

急性心筋梗塞が発症し、心停止すると1分ごとに、生存率は7~10%ずつ減少するといわれています。10分たつと生存の可能性は、ほぼゼロになってしまいます。もし近くにいる人が突然倒れたら、すぐに救急車を呼び、応急処置をするようにしてください。

心筋梗塞の応急措置
- 患者に意識がないとき(心臓発作)の応急手当 -
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  1. 患者に意識があるかどうかを確認する
  2. 119番をして救急車を呼ぶ(携帯電話からでも119で通じる)
  3. AED(自動対外式除細動器)を探す
  4. 患者の気道を確保して呼吸の有無を確認、首の血管が脈を打っていなければ心臓が止まっているので直ちに人工呼吸や心臓マッサージを開始する手首では脈は測れないので、首を両側からつまんで脈を打っているかを調べる
  5. 人工呼吸を行う(患者の口に5秒間に2回空気を吹きこむ。胸が膨らむほど)
  6. 心臓マッサージを30回続ける(脈拍より早い程度の速度で15回)4と5を救急車が来るまで繰り返す
  7. AEDが手に入れば、心臓マッサージをやめてAEDを装着して使用する

photoAEDは突然の心疾患に対処できるように、全国の大型店舗や駅、各種公共機関などではほとんど完備するようになりました。いざというときのために、AEDの設置場所を確認しておくことを心がけてください。

夢は心筋の再生医療

動脈は1ヵ所詰まったら、別のところも詰まると思いましょう。心臓発作を一度でも起こした方は、発作のリスクはより高まります。そうなる前に、メタボリックシンドロームと診断された方は、生活習慣の見直しをして、早め早めの予防を心がけてください。

心筋梗塞や狭心症といった「虚血性心疾患」は季節の変わり目に多く起こります。暑くなったり、寒くなったり気温の変化が激しいほど、血流も激しく変動するので、心臓への負担が大きくなるのです。春先などはもっとも危険な時期といえますので、十分気をつけてください。

「虚血性心疾患」の治療はカテーテル手術とバイパス手術が大半です。日本では心臓移植の例は少ないので、動脈硬化が進行している心筋そのものを治すことはできません。私の夢は心筋の再生医療ですが、再生医療はまだ研究の端緒についたばかりです。これが実現すれば、動脈硬化などでボロボロになった心筋を新しい再生した心筋に移植する治療が可能になります。私はその日が来るのを待ち望んでいます。

(取材・島田 健弘)

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