本気で怖いメタボの話

樫田光夫 先生

このところメディアでメタボリック症候群の話題が取り上げられない日はありません。メタボリック症候群の先にはどんな病気が心配されるか、そしてどのように予防するのかなど、最近の話題を取り入れながら、「本気で怖いメタボの話」をテーマに専門家の立場から説明をしていただきます。

国立国際医療センター
循環器科 医長
樫田光夫 先生

第三章 メタボからつながる病気「高血圧」その2<高血圧を下げる方法>

血圧を下げることでさまざまな病気リスクが低下する

高血圧の要因は加齢、遺伝、肥満など体質的なものと、塩分過剰、運動不足、ストレス、喫煙、過度の飲酒といった生活習慣に由来するものがあります。血圧を下げることで、さまざまな病気のリスクは低下します。収縮期血圧を2mmHg下げるだけで、心筋梗塞による死亡リスクは約7%低下しますし、脳卒中による死亡リスクも約10%低下するのです。

高血圧の一般的な降圧目標は、130/85mmHgです。また、60歳以上の高齢者の方は血圧を下げることで臓器の血流不足が起こる心配もありますので、140/90mmHgが降圧目標になります。ただし、糖尿病や腎臓病の患者さんは130/80mmHgが目標とされています。これらの病気は高血圧によって病状が進行しやすくなるために、一般よりもやや厳しい基準がもうけられているのです。

肥満解消は生活習慣の見直しから

肥満は高血圧の天敵ともいえます。そのため、肥満解消が高血圧を下げる第一の方法です。体重が1キロ落ちると血圧は約1.7mmHg低下します。肥満で高血圧の方は脂質の多い食事を控え、適度な運動で汗を流すように心がけましょう。次に生活習慣を改善するためのコツをまとめましたので、参考にしてみてください。

<食事で気をつけること>
腹八分目を心がける

食べ過ぎたときには、翌日の食事を減らして調節するようにしてください。また、野菜を多く摂ることで摂取カロリーを減らせますし、満腹感も得られます。

塩分は1日6g未満に抑える

日本人の1日の塩分摂取量は平均で11~12gといわれています。それを急に6g未満に抑えるのは大変ですので、最初は8~10gを目標にしましょう。

カリウムを十分に摂る

カリウムは、余分な塩分を排出して、血圧を抑える効果があります。緑黄色野菜や海藻類、イモ類などのカリウムを多く含む食材を食べるようにしてください。
※ただし、腎障害のある方はカリウムを多く摂取すると「高カリウム血症」になり、血圧の上昇を招くことがありますので、ご注意ください。

<運動するときのコツ> 例:ウォーキング
1日20分以上おこなう

20分ほど早歩きで、大きく腕を振って手足の筋肉を伸び縮みさせると全身の血液循環がよくなり、末梢血管が開いて血管の抵抗が減ります。歩数では2000歩が目安です。

数回に分けておこなってもいい

1日の総歩数8000歩を目指し、時間を見つけて意識して歩くようにしてください。

毎日続ける

運動は楽しくおこなうことが基本です。雨の日などは無理をしないでかまいません。

毎日続ける

太陽光を浴びると、カルシウムの吸収を高める働きがあるビタミンDの合成が活発になるので骨粗鬆症の改善にも有効です。
※熱射病予防のため、真夏の気温の高い昼間のウォーキングはなるべく避けてください。水分補給はこまめにしましょう。

<食事で気をつけること>
喫煙は止める

たばこは血管を老化させ、血圧を上げます。ヘビースモーカーはたばこを吸わない人にくらべ心筋梗塞をおこす確率が2倍以上にのぼるともいわれています。また、禁煙は5年間続けると吸わない人と同じくらいのリスクに下がります。家の外では喫煙する場所は制限されてきており、是非とも喫煙の習慣は止めましょう。

アルコールは適量を守る

アルコールは血圧を上昇させます。適量は、ビールなら大びん1本、日本酒なら1合、ワインならグラス1杯程度。週に2日は休肝日を作るように心がけてください。

入浴はぬるめのお湯で

42度以上の熱い湯の場合、浴槽に入って2分間程で血圧は30~50mmHgも上昇し、大変危険です。ぬるめのお湯につかるようにしてください。また、脱水症状をおこすと血液が固まりやすくなります。湯上り後は必ず水分補給をしてください。急激な温度差も体によくありません。冬場は脱衣する場所と浴室の温度にも気をつけてください。

これら生活習慣の改善のほかにストレスを貯めないことも重要です。イライラしたりクヨクヨしたりすると、血小板が凝集し血液がドロドロになり、血栓の原因となったりするからです。ですから、お笑い番組やコメディ映画、落語を見るなど、笑える時間を作り、ストレスを発散させるようにしましょう。

降圧薬を飲み始めたら一生飲み続ける

一定期間生活習慣の改善をしても、血圧が下がらなかった場合は薬物療法が必要です。家庭血圧の平均値が収縮期血圧135mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上。糖尿病や腎障害のある方は収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧80mmHg以上が対象となります。また、運動や減量などで体質が改善され、収縮期血圧が150mmHgから135mmHgに下がっても、拡張期血圧が100mmHg以上であれば降圧薬を飲むようにしてください。

血圧は加齢とともに上がり続けます。高血圧の治療薬は長期間継続して服用することが前提なので、薬を飲み始めたら一生飲み続けるのが基本となります。降圧薬は血圧を下げる薬であって、高血圧そのものを治すものではありません。薬を飲んでいても生活習慣の改善は欠かさないように注意してください。生活習慣を改め体質が改善され、血圧が正常化したケースもありますが、それは全体の2割程度です。多くは一生付き合っていくものだと考えたほうがいいでしょう。

降圧剤には血管を広げ、血液の循環を改善し、血圧を下げるタイプと血流量を減らして心臓のかかる負担を軽減し、血圧を下げるタイプと大きく2つにわかれます。さらに体質に合わせてさまざまなものがありそれぞれに特徴や副作用があります。時にはそれを複数服用する場合もあります。飲み合わせによって薬の効果が強くなったり、弱くなったりする組み合わせもあります。多くは1日1回の服用ですむ長時間作用の薬ですので、毎日決まった時間に飲むようにします。服用の際は必ず医師のアドバイスにしたがうようにしてください。

(取材・島田 健弘)

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