最新の糖尿病事情

内潟安子 先生

糖尿病シリーズ第二弾は「最新の糖尿病事情」をテーマにお届けします。日本と世界の傾向や予防法、治療法など、第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京女子医科大学
糖尿病センター 教授
内潟安子 先生

第七章 糖尿病撲滅に向けて

非感染性疾患が世界を席捲?

いまや糖尿病(主に2型糖尿病のことをいっています)は世界的脅威の病気といえましょう。

世界的脅威の病気といえば、エイズを思いつくことと思います。糖尿病人口の増加は2人/10秒、1年に300万人以上、糖尿病関連で亡くなる人数は3人/10秒、1年に約380万人(2007年)といわれています。これはなんとエイズでなくなる人数と匹敵するといわれます。非感染性疾患でありながら世界的に蔓延していく病気で、とどまることを知りません(第一章参照)

上記の数字は主に2型糖尿病に基づいた数字でありますが、世界的には1型糖尿病患者も1年に3%程度増加しています。

このような状況を鑑み、2006年の春から国際糖尿病連合の会長シリンク教授を中心に、糖尿病撲滅運動が世界的に展開しはじめました。

IDF主導の世界的な撲滅運動

国際糖尿病連合(IDF)は、各国の糖尿病学会や糖尿病協会の上部組織にあたり、国連の傘下に入るNPOです。WHOとか、UNESCOなどと同じ位置に並びます。

シリンク教授は2006年からIDF会長に就任しましたが、次期会長のときから糖尿病撲滅運動に力をいれてきました。この運動(キャンペーンとも)は、Unite for Diabetesキャンペーンといいます。この意味は、糖尿病に対して団結して立ち向かう、ということです。

どのような運動をしているかというと、糖尿病への世界的認識を高める、糖尿病の人道的、社会的、経済的負担を認識する、健康問題のなかで糖尿病を優先的事項とする、糖尿病合併症阻止に対する効果的戦略および公衆衛生的戦略を進める、子ども、高齢者、原住民、移民、妊婦の糖尿病に対する深い理解を高める、ことです。これを、各国の行政機関、製薬メーカー、学会、協会、サービス組織、産業界、多くの慈善団体などすべてに声をかけて、一緒に糖尿病撲滅運動をすすめようというものです。

このキャンペーンの最初の結実は、2006年の暮れに、国連において、「糖尿病に関する国連決議」の採択となったわけです。これは、エイズに匹敵する糖尿病の脅威を、国連加盟国すべてが認識し、緊急的対応をしてほしいという国連からのメッセージであります。「国連決議」は国連から発信するもっとも強いメッセージなのです。

そして、毎年11月14日を「世界糖尿病デー」と定められました。2007年のこの日、東京タワーがブルーに染まりました。他の多くのランドマークもブルーにライトアップされましたので、ご存知の方も多いと思います。

日本も糖尿病予防・撲滅に向けて動き出した

日本は上記の国連決議への取りまとめに多大な働きをしましたが、日本国内では、すでに多くの活動が動いています。日本糖尿病学会を中心に対糖尿病戦略5ヵ年計画の策定、予防への学術調査、「健康日本21」の糖尿病対策委員会設置があります。また、日本糖尿病学会、日本医師会、日本糖尿病協会の3者で「日本糖尿病対策推進会議」が設立しております。厚生労働省も、「戦略的アウトカム研究DOIT-1,2,3」を開始して、強力に多方面から糖尿病の発症予防、中断の阻止、合併症の阻止に向けての研究をすすめています。

2008年4月から特定健診が開始します。健診だけで済ませるのではなく、腹囲の高値を修正、コレステロールや中性脂肪の高値を修正、高血圧を修正、の方向に指導していこうとするものです。

いろいろな運動が一本の太い矢となって、糖尿病の撲滅に向かうことを願っています。

(取材・島田 健弘)

次回より、新シリーズ「本気で怖いメタボの話」が始まります。

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