最新の糖尿病事情

内潟安子 先生

糖尿病シリーズ第二弾は「最新の糖尿病事情」をテーマにお届けします。日本と世界の傾向や予防法、治療法など、第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京女子医科大学
糖尿病センター 教授
内潟安子 先生

第六章 青年にも糖尿病が!

その成り立ちから糖尿病は4つの種類に分類される

健康アドバイスのこれまでの章で、糖尿病といっていますのは、すべて2型糖尿病のことです。

糖尿病という疾患をその成り立ちから分類しますと、1型糖尿病、2型糖尿病、その他の特定の機序、疾患によるもの、そして妊娠糖尿病です(表1)。そのなかで、もっとも人数が多いのが2型糖尿病です。よって、新聞などのマスコミで、単に「糖尿病」といってしまうわけです。糖尿病といっていても、ああ2型糖尿病のことだな、とわかっている人は思うわけです。もちろん、正確に言えば、糖尿病と一言いっても、4種類の糖尿病があるわけですね。

糖尿病と、それに関連する耐糖能低下(※)の成因分類
I.1型 β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る
A.自己免疫性
B.特発性
 
II.2型 インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある
 
III.その他の特定の機序、疾患によるもの
A.遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
(1)膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常
(2)インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常

B.他の疾患、条件に伴うもの
(1)膵外分泌疾患
(2)内分泌疾患
(3)肝疾患
(4)薬剤や化学物質によるもの
(5)感染症
(6)免疫機序によるまれな病態
(7)その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
 
IV.妊娠糖尿病

※一部には、糖尿病特有の合併症をきたすかどうかが確認されていないものも含まれる。
出典:日本糖尿病学会編 糖尿病治療ガイド2006-2007

2型糖尿病になるのは高齢者だけではない

さて、これまで勉強してきた2型糖尿病ですが、しらずしらずのうちに血糖値があがりはじめ、尿糖陽性が健診で発見されたり、なにかの病気で医療機関を訪れたときに血糖高値が指摘されて、はじめて自分に2型糖尿病があることを知ることになります。このあとは、検査のところをみてください。どのように糖尿病が診断されるかが書いてあります。

よって、みなさんは健診を受けていると思いますが、これがもっとも早くに糖尿病を発見できる手段なのです。これに替わるものはありません。日本はすばらしい健診の国で、小さいときから高齢になるまで、多くの健診制度があります。

さて、若者や青年にも糖尿病が発症します。糖尿病はなにも高齢になってから発症する病気ではないのですね。図1は厚生労働省から発表された糖尿病実態調査です。高齢者が多いのですが、若者、20歳代、30歳代でも糖尿病の人がいることがわかります。

性・年齢層別の「糖尿病が強くうたがわれる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」の割合の推移

若者や青年の糖尿病には

若者や青年の糖尿病にはどんな種類の糖尿病があるのでしょうか。

以前、「子どもの糖尿病」とよばれていた糖尿病がありました。これは1型糖尿病です。子どもに多かったからそう呼ばれました。1型糖尿病というのは、知らず知らずに高血糖になってしまう2型糖尿病と違って、1、2、3ヶ月前から水分をよく摂取するようになったかと思うと、体重がめっきり痩せ、体がだるくなってきて、おかしいと医療機関を受診したときに、これはたいへん!とすぐ入院ですといわれる糖尿病です。そのまま放置すると体内がアシドーシスになって命に関わることになる糖尿病で、即入院が必要になります。1型糖尿病は2型糖尿病とちがって、膵臓のインスリンを産生する細胞が特異的に壊れていって高血糖になる糖尿病です。よってインスリンによる治療が即必要となります。

劇症1型糖尿病という糖尿病もあります。これはどちらかというと子どもよりも20歳代、30歳代、それ以上の方に発症しやすいことがわかっています。この糖尿病もあっという間に高血糖で重症化してしまいます。

若者や青年には、1型糖尿病のほかに、2型糖尿病も同じくらいの頻度で発症してきます。(1型糖尿病についてはこちらをご覧ください)よって、これは健診を受けていなければ、なかなか発見しにくい糖尿病といえます。いまは、小学校、中学校で、春先に早朝尿を学校に持参する検尿検査があります。このときに、尿糖陽性であるとわかると2型糖尿病の可能性を指摘されることになります。ただし、早朝尿での検査なので、食後だけが高血糖になる早期なら、発見されにくいという欠点があります。

それなら、どういうことで発見されるのでしょう。それは糖尿病からくる合併症でこまったときです。これで医療機関を受診してはじめて、2型糖尿病がたぶん数年前ないし10年前からあったのではないか、とわかるわけです。

また、女性の場合、妊娠して健診を受けてはじめて、2型糖尿病が妊娠前からあったのではないか、といわれることがあります。このとき、眼の網膜や腎臓にすでに知らず知らずのうちに合併症がでていることがあります。妊娠を継続することに差し障わったり、お腹の赤ちゃんの成長発達にすでに影響を与えてしまっていることもあります。そこで、いま、日本糖尿病財団と日本糖尿病妊娠学会は、女性ならば血糖値に関心をもってもらうことを啓発しています(妊娠学会HP)。

また、妊娠してはじめて高血糖がわかることがあります。これが妊娠糖尿病というものです。女性は妊娠前から、妊娠しても血糖値に十分関心をもっていただきたいと思います。

(取材・島田 健弘)

次回のテーマは、糖尿病撲滅に向けてです。

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