最新の糖尿病事情

中神朋子 先生

糖尿病シリーズ第二弾は「最新の糖尿病事情」をテーマにお届けします。日本と世界の傾向や予防法、治療法など、第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京女子医科大学
糖尿病センター 講師
中神朋子 先生

第五章 食後の血糖値を上げすぎないコツ

血糖値が急激に上がると動脈硬化が促進される

食事をすると、腸からブドウ糖が吸収されて血糖値が上がります。血糖値が上がると、すい臓からインスリンというホルモンが分泌され、ブドウ糖は筋肉や脂肪細胞に取り込まれ、エネルギーとなり、その結果血糖値は下がります。しかし、糖尿病や糖尿病予備群では、インスリンの分泌、特に初期分泌が低下しているため、食後に急速に正常範囲を超えて血糖値が上昇します。また、肥満により引き起こされたインスリン抵抗性(インスリンがうまく働かない)もあいまって、いったん急上昇した血糖値はなかなか低下しません。

このように、食後急激に血糖値が上昇すると、血管の内皮細胞にストレスがかかり、血管の壁が傷つき、動脈硬化が形成され促進されます。また、血糖値の高い血液は、ねばねばしているため血栓を形成しやすく、動脈硬化で傷つき、内腔が狭くなった血管には血栓が詰まり、さまざまな血管合併症がおこります。心臓や脳につながる太い血管でこの合併症がおこると、心筋梗塞や脳梗塞ということになるわけです。つまり、食後の血糖が急速に上昇する傾向を持つ人は将来、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高いのです。

また、食後高血糖は、糖尿病予備群時代から始まり、その後空腹時の血糖値が上昇し、最終的には糖尿病が発症すると考えられているため、食後の血糖値を上手に管理することは、糖尿病の発症予防、ひいては糖尿病に起因する3大合併症(神経障害、網膜症、腎症)の予防にもつながるわけです。

食後高血糖の予防には、バランスのいい食事、適度な運動、分食が大切

食後高血糖を予防するには、よく噛んでゆっくり食べる、野菜をしっかりと採る、水分を補給しながら食べるという工夫が必要です。また麦などの食物繊維を多く含む穀物でブドウ糖を採るのもいいでしょう。食物繊維は糖質や脂質の吸収を抑えるので、食後の血糖値の上昇のみならず中性脂肪やコレステロール値を抑えることにもつながります。

ゆっくり食べると食後の血糖値も食事のスピードに合わせてゆっくり上昇するため、血管の内皮細胞のストレスも軽減されます。また、早食いの人はそうでない人に比べると太りやすいというデータもあります。太っていると糖尿病になりやすいわけですから、ゆっくりよく噛んで食べることは、少量の食事でも満腹感が得られるようになるため重要なのです。

また、食直後にデザートなどの甘味を食べたりしないようにしましょう。若干時間をずらして、3~4時間ほど空けて、食事により上昇した血糖値が低下してきたところで摂取したほうがいいでしょう。ただし、この分食も、1日の適正な総摂取カロリーの中で行ってください。あくまでも、食べすぎは禁物です。

食後の運動も大切です。食後30分~2時間は血糖値がもっとも上がる時間帯なので、この時間帯は、ごろりと横にならず、体を動かしていることが大切です。

「1日の適正エネルギー摂取量」=標準体重(kg)×活動量(kcal)
軽労働の活動量:25~30kcal デスクワークや育児のない専業主婦など
中労働の活動量:30~35kcal 製造・加工・販売・サービス業、自営業者、育児中の主婦など
重労働の活動量:35~40kcal 建設業、農業、林業、水産業などの肉体労働

糖尿病の人は2、3日。糖尿病でない人は1週間、2週間の範囲で食生活の見直しを

人間ですので毎日ストイックな食生活が続いてはストレスもたまります。特に糖尿病でない人であれば、なおさらでしょう。たまに食べ過ぎてしまうこともあると思います。しかし、食べ過ぎた翌日は前日に食べ過ぎた分だけ摂取カロリーを少なくするなどして調整しましょう。

糖尿病の人は2、3日。糖尿病でない人は1週間、2週間の範囲で食生活を見直して食べ過ぎたと思ったら修正するようにすることが理想的です。過食のまま生活が修正されないでいると太って、血糖値も上昇してしまいます。

また規則正しいリズムで生活すること、いらいらしないこと、睡眠不足にならないことも大切です。睡眠不足が続くと、体内はストレス状態となり、血糖値や血圧値をあげてしまうといわれています。

以上、食後の血糖値を上昇させすぎないことの重要性を述べました。何かと気ぜわしくストレスの多い毎日と思いますが、健康的な食生活と適度な運動、上手に気分転換をしながら、心身ともに健康でいられるよう自己管理すること、これが糖尿病の患者さんにとっても、また糖尿病予備群の方にとっても、大切だと思います。

(取材・島田 健弘)

次回のテーマは、青年にも糖尿病が!です。

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