最新の糖尿病事情

宇治原典子 先生

糖尿病シリーズ第二弾は「最新の糖尿病事情」をテーマにお届けします。日本と世界の傾向や予防法、治療法など、第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京女子医科大学
成人医学センター内科・糖尿病センター内科講師
宇治原典子 先生

第三章 糖尿病の検査について

糖尿病というけれど、尿ではなく血液で診断します

糖尿病という名称のため、尿検査をしてブドウ糖をはかると思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、糖尿病は血液検査で診断します。

ブドウ糖は血液中を循環して筋肉や細胞を動かすエネルギーとして供給されます。糖尿病は血中のブドウ糖濃度が高くなる病気ですが、ある程度血糖値が高くなると血液中でブドウ糖が処理しきれなくなり、尿糖として排出されます。ですから、逆に尿検査では軽度の糖尿病だと見逃してしまう可能性があるのです。

糖尿病の検査の中には、糖尿病の診断のための検査と糖尿病の治療のための検査があります。

現在の糖尿病検査は2ステップ

糖尿病の診断のための検査には次の判定基準があります。

  • (1)随時血糖値200mg/dl以上が確認された場合
  • (2)早朝空腹時血糖126mg/dl以上が確認された場合
  • (3)75gブドウ糖負荷試験で2時間値200mg/dl以上が確認された場合

上記いずれかひとつが確認された場合は糖尿病型と判定します。日を改めてもう一度検査をして、再び(1)から(3)のいずれかが確認されると糖尿病と診断されます。糖尿病は、このように2ステップで診断するようになっています。

(3)のブドウ糖負荷試験とは、75gのブドウ糖を飲んだ後に30分後、60分後、120分後の血糖値を測定するというものです。この検査では空腹時の血糖値が126mg/dl以上、ブドウ糖を飲んでから2時間たったときの血糖値が200mg/dl以上の場合を糖尿病型と診断します。空腹時血糖値が110mg/dl未満、ブドウ糖負荷後2時間値140mg/dl未満である場合を正常型といいます。正常型でも糖尿病型でもない場合を境界型(予備軍)と言います。

糖尿病、境界型、正常型、それぞれの血糖値の基準
ブドウ糖負荷試験2時間値

空腹時血糖が110mg/dlくらいなのに、ブドウ糖負荷をすると200mg/dl以上になるという隠れ糖尿病の人もいらっしゃいます。そのため一番確かな診断方法はブドウ糖負荷試験を行い、2時間後の値を調べるということです。 しかし、ヘモグロビンA1c(後述)が6.5%以上であった場合やすでに網膜症など糖尿病の合併症が発症している場合、のどの渇き、体重減少などの典型的な糖尿病の症状がある場合は一度の血液検査の結果のみで糖尿病と診断します。

ヘモグロビンA1cが6.5%以下なら合併症は発症しにくい

糖尿病と診断された場合は通院治療を行います。糖尿病で必ず行う検査にヘモグロビンA1cがあります。ヘモグロビンA1cは1〜2ヵ月の血糖値のコントロール状況をあらわす値で1〜2ヵ月の血糖値の平均のようなものです。

糖尿病の一番の問題は、よほど血糖値が高くなってのどが渇いたり、体重が減少したり、昏睡状態になったりしない限りは血糖値が高いことによる自覚症状はほとんどないことです。しかし、高血糖が続くと水面下で徐々に合併症が進行していきます。糖尿病の怖いところは、全身にさまざまな合併症をおこすことです。
血糖値は食べ物や体調、運動量などによって変化しますので、そのコントロール状態をみるために、ヘモグロビンA1cを測ります。

血糖コントロールの指標とその評価
指標 不可
不十分 不良
HbA1c (%) 5.8未満 5.8-6.4 6.5-6.9 7.0-7.9 8.0以上
空腹時血糖 (mg/dl) 80-110
未満
110~129 130~159 160以上
食後2時間
血糖 (mg/dl)
80-140
未満
140~179 180~219 220以上

血糖値の検査結果をよくしたいばかりに、医療機関に受診する前日に食事を減らして、血糖値を下げてから検査を受けてもヘモグロビンA1cをみると普段のコントロール状況がわかります。検査当日の血糖値がよいだけでは合併症は防げません。そこでそのような一回の食事や一日の体調に左右されないヘモグロビンA1cの検査は糖尿病検査の一番重要検査となっています。

糖尿病のない人のヘモグロビンA1cの値は5.8未満です。多くの2型糖尿病患者さんの状態を追跡した調査では、この値を6.5%以下に抑えることができれば、あまり糖尿病の合併症は発症しないといわれています。ですから日本糖尿病学会では、ヘモグロビンA1cを6.5%以下にコントロールするように推奨しています。

現在自己血糖測定器を購入すればご自宅でも血糖検査は可能です。これは自宅でのコントロールの一助となりますが、糖尿病と診断された方は、かならず1~2ヵ月に一度は、通院することをお勧めします。

合併症早期発見のための検査

前にも述べましたように、糖尿病の合併症は無症状に進んでいきますので、合併症の早期発見のために眼底検査や腎臓障害(糖尿病性腎症)の早期発見のための尿中微量アルブミン測定、動脈硬化による心筋梗塞や狭心症など心臓血管疾患評価のために心電図や胸部X線検査などを定期的に行う必要があります。また、定期的に血液中の脂質や血圧をはかり、合併症の予防に努めましょう。また、体重測定はどこでもできる簡単な検査ですが、糖尿病のコントロールの評価には大変役にたちます。できるだけ毎日体重計にのるようにしましょう。

その他のコントロールの指標

体重
標準体重=(身長)2 ×22
Body Mass Index(BMI)=体重(kg)/(身長)2
血清脂質
総コレステロール 200mg/dl以下
LDLコレステロール 120mg/dl以下
中性脂肪 150mg/dl以下
HDLコレステロール 40mg/dl以下
血圧
130/85以下
蛋白尿1g/日以上の腎障害がある場合 125/75以下

(取材・島田 健弘)

次回のテーマは、糖尿病の予防についてです。

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