糖尿病編

柏木厚典 先生

健康を維持するためには、自分の生活習慣や年齢、体力などと向き合うことが大切です。ここでは第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

滋賀医科大学医学部付属病院
内科学講座
教授 柏木厚典 先生

第九章 怖いのは合併症“その他の病気”

命にかかわる高血糖昏睡

糖尿病の合併症
急性合併症 慢性合併症
高血糖性昏睡
・糖尿病性ケトアシドーシス
・非ケトン性高浸透圧性昏睡
 など
三大合併症(細小血管障害)
・目の病気(網膜症など)
・腎症
・神経障害
その他の血管障害
・動脈硬化症
・心筋梗塞
・壊疽
 など
低血糖性昏睡
感染症
・腎盂腎炎
・肺炎
・皮膚感染症
 など

糖尿病の合併症のなかでも、三大合併症と呼ばれるのが「腎症」「神経障害」「目の病気」。これらは糖尿病になってから時間をかけて進行していく、慢性合併症といわれる病気です。心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす動脈硬化症も慢性合併症に含まれます。
糖尿病の合併症には、こうした慢性のものとは別に、「急性合併症」といわれるものもあります。急性合併症は、急激に身体に異変をきたし、すぐに命を落としかねない危険なものです。

急性合併症のなかでも、気をつけておきたいのが糖尿病性昏睡で、そのひとつが「ケトアシドーシス昏睡」です。
糖尿病になるとインスリンの作用が不足し、糖をエネルギーに変えることが難しくなります。代替エネルギーとして体内の脂肪やたんぱく質が使われ、その際、ケトン体といわれる酸性の物質が血液中に大量に出ます。すると血液が極端な酸性になり(ケトアシドーシス)体内における糖代謝が障害され、エネルギー産生が低下し細胞機能が低下します。脳細胞も障害され、昏睡状態に陥ってしまうのです。

高血糖性昏睡では、もう一種類の「非ケトン性高浸透圧性昏睡」にも気をつけなければなりません。これはインスリン分泌が比較的保たれている糖尿病患者さんが脱水、外科手術、輸液などによって誘発される病態で高齢者におこりやすいといわれています。脱水症状から浸透圧と血糖値が急激に高まり、昏睡状態に至ります。インスリン治療を行っていない糖尿病患者にもよく見られる症状で、脳卒中と思われてしまうことがあるので注意が必要です。

低血糖でも起こる昏睡

糖尿病の治療でしっかりと血糖をコントロールしていても、昏睡を引き起こしてしまうことがあります。それが「低血糖性昏睡」です。低血糖性昏睡は、血糖コントロールをしっかり行っている人ほど、発症しやすい症状です。
薬を飲んだり、インスリン注射によって血糖をコントロールしていると、普段よりも食事の量が少なかったり、運動量が増えた時、血糖値が必要以上に下がってしまいます。すると、意識がもうろうとし、体が冷たくなり、発汗して、意識を失ってしまうのです。

低血糖状態では、昏睡まで至らなくても体がだるくなったり、おかしな行動や言動を取ってしまうことがあります。気をつけなければならないのは、その状態でも本人はしっかりとした意識を持っていると思っている点です。そのため、他人に行動や言動を指摘されても、それを認識できないことが多いのです。
こうした状態のまま車の運転や水泳などを行うと、非常に危険です。もし糖尿病と診断されていて、行動や言動がおかしいと指摘される場合には、低血糖の症状の場合も考えられるので、すぐに医師に相談するようにしましょう。

血糖コントロールをしっかりと行っている人は、運動量や食事量、食事の時間に、しっかりと気を配る必要があります。必要であれば、激しい運動の前に適量の糖分を補給しておくようにしましょう。

免疫力低下から来るさまざまな感染症

さらに、糖尿病は全身にさまざまな感染症を引き起こします。これは免疫力が低下していることが大きな要因です。
なかでも多いのが尿路感染症。膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)を引き起こす尿路感染症は女性に多い病気ですが、糖尿病患者も多く感染します。腎盂腎炎をおこしますと、ふるえ、高熱や腰痛といった症状がでます。

また、糖尿病の人は皮膚など(特に足)に細菌が入って感染症をきたしやすく、そのまま放っておくと急激に壊疽を起こし、全身に広がることもあります。足のケアはまず足を診ることから始めましょう。

そのほか、歯周病にも気をつけなければなりません。現在、糖尿病患者の60%が歯周病にかかっているといわれています。歯が抜け落ち、そのまま炎症が続く歯周病は、動脈硬化にも影響していると考えられています。

急性合併症や急性感染症には、命にかかわる非常に危険なものも多くあります。普段から食事や運動に気を配った生活を営むことが、糖尿病予防の第一歩なのです。

(取材・子川 智)

次回のテーマは、大切なのは自己管理です。

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