糖尿病編

渥美義仁 先生

健康を維持するためには、自分の生活習慣や年齢、体力などと向き合うことが大切です。ここでは第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京都済生会糖尿病臨床研究センター所長
東京都済生会中央病院内科部長
渥美義仁 先生

第六章 怖いのは合併症 その2<糖尿病性神経障害>

神経障害はもっとも起こりやすい症状

神経障害は、糖尿病のなかでも起こりやすい合併症です。糖尿病が神経障害につながるのは、次の二つの要因があるといえます。ひとつは、ブドウ糖がたんぱく質と結びついてたんぱく質が糖化してしまい、細胞が正常に働かなくなるため。もうひとつが、細胞内にソルビドールという物質がたまってしまって、細胞がむくみ、機能が落ちてしまうためです。このように細胞がうまく機能しなくなると、手足に痛みやしびれを感じるようになり、さらに進行すると、脳からの情報をうまく伝えられなくなったり、逆に脳に情報が伝わらなくなってしまいます。

自覚症状があっても、進行すれば無自覚に

神経障害は自覚症状が乏しい目や腎症と違い、早くから自覚症状が出るのが特徴です。そのなかでも早い時期に現れる症状が、末梢神経の異常による足のしびれや痛みです。末梢神経とは全身の隅々にまで張り巡らされた細い神経をいいます。症状が出るのは両足同時で、しびれの他にじりじりした感じやチクチクした刺すような痛み、または電気が走ったような痛みを生じます。
その他にも、体の各部で運動・知覚症状が見られるようになります。

糖尿病患者さんの運動・知覚神経障害の症状

こうした症状は糖尿病になってからの期間が長いほど、また、血糖のコントロールが悪いほど強くなります。恐ろしいのは、こうした痛みが、ある一定の時期を過ぎてしまうと弱くなったり、収まったりしてしまう点です。神経障害は、進行が進むにつれて自覚できなくなります。痛みがなくなり治ったように思ってしまいますが、痛みを感じないのは、実は神経の機能を失っているためなのです。

特に、末梢神経が機能しなくなると、次に起こる症状は足の潰瘍や壊疽です。最悪の場合、切断しなければなりません。糖尿病と診断された後、手足のしびれや痛みを感じたら、迷わず医師に相談しましょう。早い段階であれば、治療が可能です。

糖尿病の患者さんの自律神経障害の症状末梢神経障害とともに、自律神経障害にも気をつける必要があります。自律神経とは胃腸や心臓、血圧、膀胱などの機能を調節している神経で、障害が起きるとそれぞれの臓器で異常が見られるようになります。

自覚できる症状としては、胃腸の働きが弱まることからくる便秘や下痢、胃のもたれ、尿の出や切れが悪い、汗を異常にかく、などがあります。また、起立性低血圧といわれる立ちくらみも代表的な症状です。さらに、狭心症の痛みも感じにくくなり、放っておくと心筋梗塞を起こす恐れがあります。

もうひとつ、自律神経障害の大きな症状としてあげられるのが男性の勃起障害(ED)です。勃起障害は精神状態に大きく影響し、鬱々とした気分になりがちで、夫婦関係の悪化にもつながりかねません。

適切な治療薬とともに血糖コントロールを

勃起障害に関しては、5年ほど前から「バイアグラ」「レビトラ」などの画期的な治療薬が登場しており、医師に処方してもらうことで効果が見られます。現在、糖尿病からくる勃起障害の半分はこうした治療薬によって治ります。また、糖尿病のイメージからくる心因性のものであれば、カウンセリングを受けることで治る場合もあります。

先の末梢神経障害は、まず血糖コントロールをすると共に、フットケアを行うことも大切です。糖尿病と診断された後、足にしびれなどを感じ始めたら、毎日足に注意して清潔にし、水ぶくれやタコ、水虫ができていないか確認しましょう。もし、水ぶくれやタコができていても、自分で処理してはいけません。必ず医師や看護師に見てもらうようにしてください。また、感覚が鈍くなるために起こる火傷にも注意が必要です。
もちろん、食事・運動療法も欠かせません。そして糖尿病性神経障害は、血糖コントロールとともに、それぞれの症状に合った適切な投薬治療で、じっくりと対処していく必要があるのです。

(取材・子川 智)

お断り:健康アドバイスについてのご質問は、基本的に当社ではお答えしかねますのであらかじめご了承ください。