糖尿病編

津田謹輔 先生

健康を維持するためには、自分の生活習慣や年齢、体力などと向き合うことが大切です。ここでは第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

京都大学大学院 人間・環境学研究科
教授 津田謹輔 先生

第三章 糖尿病と予備軍のための生活改善“食事編(2)”

糖尿病対策の食事の基本

糖尿病になる原因はインスリンの作用不足です。このことに食事という環境要因、なかでも動物性脂肪の過剰摂取が関わっていることは、前回触れました。実際に、具体的に食生活を改善しようとした場合、次の事項に注意する必要があります。

<1.適性なエネルギー量の食事>
肥満を解消したり、肥満にならないことを考えた上で、仕事や運動を含めた日常生活を営めるだけの、必要最低限のエネルギー量の食事を心がける。
<2.栄養素のバランスの良い食事>
炭水化物、タンパク質、脂質、の三大栄養素のバランスがとれていることが重要。同時にビタミンやミネラルなど微量栄養素や食物繊維が不足しない食事を心がける。
<3.規則的な食習慣>
食後の血糖値の変動を少なくするためにも、一日のエネルギー量の摂取は、朝食、昼食、夕食に均等になるように。また、深夜(22時以降)の食事は控える。

すでに糖尿病と診断されている人は、次のことにも気をつけなければなりません。

<4.適性なエネルギー量の食事>
肥満を解消したり、肥満にならないことを考えた上で、仕事や運動を含めた日常生活を営めるだけの、必要最低限のエネルギー量の食事を心がける。
<5.栄養素のバランスの良い食事>
炭水化物、タンパク質、脂質、の三大栄養素のバランスがとれていることが重要。同時にビタミンやミネラルなど微量栄養素や食物繊維が不足しない食事を心がける。

これらが糖尿病防止、糖尿病食の基本です。適性なエネルギー量は、標準体重から求めることができます。


標準体重=身長(m)×身長(m)×22


この標準体重に、1kあたり25~35kcal(一般的に、デスクワークが多いのであれば約25kcal、肉体労働がメインであれば約35kcal)を掛け合わせると、一日の必要エネルギー量が算出できるのです。

手軽に使える「食品交換表」

食品分類表必要なエネルギー量を摂取するためには、食事のカロリーを知らなければなりません。材料や調理方法などを考えてカロリーを導き出すのは大変です。そこで、もっと手軽にエネルギー量を考えるために日本糖尿病学会が作成したものが「食品交換表」です。

左の図は、「食品交換表」の骨幹部分である、食品分類表です。ここでは、含まれている栄養素が近い食べ物を、6つの表に分類しています。同じ表のなかにある食べ物は栄養素がほとんど同じなので、1単位分(80kcal)を交換して食べても、摂取できる栄養素は変わりません。たとえば、ごはん50g(小さな茶腕半杯分)も、食パン30g(6枚切りの約半枚)も、「食品交換表」では同じ1単位にあたります。ということは、ごはん2杯を食べても、食パンを2枚食べても、摂取できる栄養素は同じというわけです。

厳密な糖尿病食は自宅で作るのは難しいですが、予備軍から抜け出すための食生活改善には、この「食品交換表」はとても役立つはずです。


出典:日本糖尿病学会編「糖尿病食事療法のための食品交換表 第6版」文光堂・日本糖尿病協会(平成14年発行)
※画像をクリックすると拡大表示されます。

「食品交換表」からの掲載については、社団法人日本糖尿病学会の引用使用許可を得ています。リンクあるいは転用など行う場合は、必ず該当する部分のデータあるいはプリントアウトを添付するなどして同学会の引用許可を得てください。

 

20単位(1600kcal)の献立例

  献立名 食品名   表1 表2 表3 表4 表5 表6 付録 嗜好食品
朝食
8時
トースト 食パン 4枚きり1枚 90 3              
マーガリン 小さじ2 10         1      
牛乳 牛乳 コップ1弱 180       1.5        
洋風卵とじ 1個 50     1          
たまねぎ 1/4個 40           40    
キャベツ 1枚 30           30    
しめじ 1/4株 20                
パセリ 少々 1           1    
コンソメ   1                
こしょう 少々 0.01                
果物 りんご 1/4個 75  

0.5

           
キーウイ 1個 75   0.5            
昼食
12時
(外食)
お刺身セット ごはん 1/4量 残す 180 3.6              
まぐろ 全量摂取 40     0.7          
たい 全量摂取 20     0.3          
いか 全量摂取 20     0.2          
大葉 1枚             1    
大根   30                
わさび 少々                  
しょうゆ                    
煮物 さといも 小3個 45 0.3              
にんじん   20           20    
厚揚げ 1/2個 30     0.5          
しょうゆ   5                
砂糖   2             0.1  
みりん   3             0.1  
漬物
味噌汁
たくあん 2枚 10           10    
わかめ   1                
ねぎ   3                
みそ   12             0.3  
夕食
7時
ごはん ごはん   200 4              
冷しゃぶ 豚もも肉 3枚 60     1          
刺身こんにゃく   30                
レタス   20           20    
赤パプリカ   5           50    
黄パプリカ   5           20    
たまねぎ   5           20    
ポン酢   20                
お浸し ほうれん草   80           80    
春菊   20           20    
花かつお   1                
しょうゆ   5                
ひじきの煮つけ ひじき   10                
にんじん   10           10    
油揚げ   5     0.3          
みりん   3             0.1  
しょうゆ   5                
  単位合計 10.9 1 4 1.5 1 322 0.6 0
1.1

20.1単位 1606kcal

ワンポイントアドバイス
<朝食>
朝食は時間が無いとの理由でお粗末になりがちな食事です。炭水化物とたんぱく質を確保し、野菜や果物により1日に必要なビタミンやミネラルを朝から心掛けて摂取しましょう。

<昼食(外食)>
外食では野菜の摂取量を確保することはなかなか難しいものです。できるだけ、野菜・海藻類・きのこ類の付いている献立を選びましょう。 外食の味付けは、比較的しっかり味付けされたものが多いのが特徴です。できれば漬物などは残すことを考えましょう。糖尿病の方は高血圧を合併しやすといわれているので注意しましょう。

<夕食>
しゃぶしゃぶは、余分な肉の脂を落とすことが出来る優れた調理法であり、飽和脂肪酸への対策は動脈硬化を含めた重要な管理ポイントです。 海藻類もきのこ類と同様に忘れがちな食材です。日本人のカルシウム摂取に大きく関与している食材ですので、積極的に摂取することを心がけましょう。


献立作成上の注意点

  1. 毎食交換表の表1・表3・表6が摂取できているか確認しましょう。そのことによりバランスの良い食事が確保されます。
  2. 果物を間食として摂取する習慣がある方は、食後の血糖値が上昇する可能性がありますので、果物の種類を考えたり、自身の血糖値の変動を確認することも必要です。
  3. 糖尿病患者様の食生活を検討すると、「糖質(炭水化物)」の過剰摂取のみが影響しているのではなく、多くの場合「脂質」の過剰摂取によるコントロール不良を起こしていることが多く、調理方法や食品の選択に注意が必要です。詳細については管理栄養士に相談ください。

(献立作成/アドバイス・京都大学医学部附属病院 幣 憲一郎)

世界的に見直される日本食

健康的な食生活を営むには、必要エネルギー量を考え、栄養素をバランスよくとることが重要です。そういった意味では、日本の食文化は非常に優れていたと言えるでしょう。ごはんや麺類などを主食とし、魚や肉、卵などが調理された主菜、さらに野菜の入った副菜が揃っています。こうした食文化を持っているのは世界的に見ても日本だけなのです。戦後まもなくまでの日本人の食事は、ややタンパク質が少なく、塩分が多かったのですが、その点を少し見直すことで、今でも日本食はかなりバランスのとれた食事をとることができます。こうしたこともあり、和食は世界的にも見直されています。世界から遅れないよう、我々日本人自身も食生活を一度見直す時期に来ているのかもしれません。

(取材・子川 智)

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