糖尿病編

及川眞一 先生

健康を維持するためには、自分の生活習慣や年齢、体力などと向き合うことが大切です。ここでは第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

日本医科大学 第三内科内分泌代謝
教授 及川眞一 先生

第二章 なぜ糖尿病になるの?

糖尿病の種類は3つ

前章で、糖尿病にはインスリンというホルモンが深くかかわっていることに触れました。ではなぜ、インスリンが十分に分泌されなかったり、細胞や筋肉でうまく作用しなくなってしまうのでしょうか。これにはさまざまな原因があり、大きく3つに分類することができます。

1型糖尿病
すい臓のランゲルハンス島のβ細胞が破壊されることで、インスリンが作られなくなり、分泌量が足りないために血糖値が高くなります。
2型糖尿病
原因は解明されていませんが、何らかの要因でインスリンの分泌量が少なくなったり、インスリンが正常に作用しないために、血糖値が高くなります。
その他に起因する糖尿病
遺伝子異常や、慢性すい炎といったほかの病気が原因で血糖値が高くなります。妊娠による糖代謝異常などもあります。
なかでも1型糖尿病と2型糖尿病が、現在、問題となっている糖尿病です。1型糖尿病は、自己免疫疾患により引き起こされる糖尿病で、全体の数%です。何らかの原因で自己免疫反応が異常をきたし、インスリンを産生するために必要なランゲルハンス島のβ細胞を、異物と誤認してしまいます。すると、抗体を作ってβ細胞の大部分を破壊してしまうメカニズムができてしまうのです。ウイルスに感染したりすると自己免疫疾患が起こると考えられています。原因となるウイルス感染の報告がありますが、未だ、これからの研究が必要です。インスリン治療を行わずに放っておくと、昏睡状態になることがあります。

90%以上を占める「2型糖尿病」とは?

成人で糖尿病といえば、ほとんどの場合は2型糖尿病のことを指し、成人糖尿病患者数の90%以上を占めています。最近は小児肥満が増加し、小児でも2型糖尿病が認められます。2型糖尿病は、基本的にはインスリンがうまく分泌されなかったり、作用が正常に行われないために血糖値が上がる糖尿病です。インスリンの分泌や作用がうまく行われない理由には、さまざまな要因が考えられていますが、やはり糖と脂肪が深く関わっています。

考えられる要因のひとつが「糖毒性」によるものです。糖(グルコサミン)は細胞の中でアミノ酸と結びつきます。その際“もういらないよ”といった具合に、インスリンの作用を抑制する働きが現れます。血糖が多ければ、インスリン抑制作用も強くなります。そのため、細胞の中に糖が取り込まれにくくなるのです。また、体の細胞には、糖を取り込むために働くタンパク質「糖輸送担体(グルコース・トランスポーター)」が存在します。血糖値の高い状態が長期間続くと、このグルコース・トランスポーターのリサイクルが悪くなります。すると、インスリンが作用しにくくなってきます。

もうひとつの要因は、過食や偏食などによる脂肪酸の増加によるものです。脂肪を取りすぎて血液中の脂肪酸が増えると、インスリンの作用を妨げることが分かっています。また、脂肪肝になってしまうと、肝臓でのインスリン作用が低下してしまいます。それに加え、脂肪の過剰摂取で中性脂肪が増加すると、脂肪細胞から分泌される「アディポネクチン」と呼ばれるホルモン物質が少なくなります。アディポネクチンが減少することで、インスリンの作用が低下してしまうと言われています。さらに、脂肪酸の増加は「脂肪毒性」にもつながります。多量の脂肪酸が長期間存在すると、すい臓のβ細胞の数が減り、インスリンの産生そのものが少なくなってしまうのです。

糖尿病になる要因は何?

今のところ、糖尿病になるメカニズムは完全に解明されてはいません。体質に関係することもありますが、現代人のライフスタイルが大きく影響を及ぼしていることは間違いなさそうです。ライフスタイルを変化させれば、糖尿病の発症頻度も変わった実験データがあるからです。
ライフスタイルとひとことで言っても、食事や運動、ストレスなどが絡み合って形成されています。食生活の変化によって脂肪の摂取量は急激に増えていますが、それだけで糖尿病の患者さんがこれだけ増えるとは考えにくいでしょう。ストレスから過食になってしまっても糖や脂肪の摂取量は増えます。また、ストレスは血糖を制御する交感神経にも関係してきます。

糖尿病になってしまったら、規制が多くて面倒だと考えてしまいがちかもしれません。とはいえ、健康を考えて生活を送っている人にとっては、それが普通なのです。糖尿病には、早めの予防が一番です。

(取材・子川 智)

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