糖尿病編

岩本安彦 先生

健康を維持するためには、自分の生活習慣や年齢、体力などと向き合うことが大切です。ここでは第一線の専門家にわかりやすく説明していただきます。

東京女子医科大学糖尿病センター センター長
内科学第三講座 主任教授
岩本安彦 先生

第十章 大切なのは自己管理

自己管理は糖尿病治療の基本

糖尿病治療で大切な食事療法と運動療法は、日常生活に密接に関係しています。そこで重要になってくるのが、自己管理です。
病院に受診するのは多くて2週間に1回程度。1、2カ月に1回ということもあります。いくら高価でいい薬を使おうとも、日常の食事や運動などのコントロールがうまく行われていなければ、血糖はなかなか下がりません。

また、自己管理を行うということは自分が今どういう状態なのかを認識するためにも重要なことです。インスリンを注射していない患者さんは、病院への受診時以外、血糖値を測ったり検査を受けることはほとんどありません。食事療法や運動療法がうまくいっているかどうかを自身が知る目安としても、普段の生活のなかでの自己チェックが大切になってきます。

体重、尿糖、血糖、血圧のチェックが自己管理の第一歩

糖尿病治療で重要な食事療法と運動療法ですが、その効果をチェックできるものとして挙げられるのが体重、尿糖、血糖および血圧です。
体重には、身長(メートル)を二乗したものに22を掛けて算出する「標準体重」があります。糖尿病でなくても、肥満の人や、やや小太りな人はこの標準体重を目指して体重を減らしていく必要があります。体重は5%減らすだけでも糖尿病予防や悪化防止に効果があると言われており、体重がなかなか減らなくても、毎日体重計に乗って自分の体重をチェックするようにしましょう。体重を気にすることで、食事療法や運動療法の意識につながるからです。

体重の測定と管理のポイント

毎日決まった時間帯に測る 記録を付ける
毎日一定ならば都合のよい時間でいいが、一般に朝が最適といわれている。   長期間の体重の変化を把握でき、血糖コントロールの良否を見るためにも役立つ。
   
目標体重をキープする   急激にやせたときは注意
医師から指導された目標体重をキープできるよう、食事療法や運動療法に励む。   糖の利用が悪いために急激に体重が減ることがある。病状が悪化している証拠。

もうひとつ重要なのが尿糖のチェックです。尿糖を測る試験紙は、薬局などで簡単に購入でき、およその血糖値が分かります。尿糖チェックで気をつけたいのは、それを測るタイミングです。血糖値、とくに糖尿病患者さんの血糖値は食前と食後で大きく違い、食前よりも食後のほうが高くなります。動脈硬化にも食後血糖値は大きく関係するとされ、ぜひ食後血糖値を反映する食後の尿糖を測ることをおすすめします。正確に測るならば「二回排尿法」という方法で測るのがいいでしょう。食後排尿し、膀胱をからっぽにした状態から、30分~1時間後に排尿した時の尿を試験紙で測ると、より正確にその時点での血糖値の高低を推定することができます。

尿糖検査での望ましい検査値

  血糖コントロール良好と
考えられる検査値
ポイント
食 前 陰性(-) 食前の検査値は常に陰性であるよう努める。空腹時に尿糖が出る(陽性)場合は血糖コントロールがかなり悪い
食 後
2時間
陰性(-)~ 擬陽性(±) 食後2時間は血糖値がもっとも高くなるが、(±)までなら血糖コントロールがおおむね良好と考えられる

さらに血糖の自己測定も行えるといいでしょう。今は少量の血液で短時間に正確に血糖値を測定できる簡易測定器があります。それを使って、食前、食後、就寝前などの血糖値を測っておくと、治療効果の判定だけでなく、治療のモチベーションを高めることにもつなげられます。
また、最近は血圧も重要視されています。糖尿病性腎症などは血糖とともに血圧も重要な要因として捉えられています。ただ、医師の前だと緊張してしまい血圧が上がってしまう人(白衣高血圧)もおり、そういう人は自宅での血圧チェックが重要です。受診の時の血圧だけをもとにしてしまっては、薬の量や種類を誤って処方することにつながるからです。

禁煙・節酒も重要な管理要素

自己管理しなければ絶対にやめられないものもあります。それは嗜好品であるタバコやお酒です。タバコは百害あって一利無し。絶対にやめるようにしてください。現在は、ニコチン依存症を病気としてとらえ、病院で治療することもできますので、医師に相談するのもひとつの手です。
仕事上、お酒がどうしてもやめられないという人も、節酒に心がける必要があります。インスリンや経口糖尿病薬を常用している人は、飲酒によって思わぬ低血糖を引き起こす場合があります。お酒の量をコントロールするのも重要な自己管理なのです。

糖尿病の患者さんに理解してほしいのは、糖尿病は基本的に自己管理しなければならない病気だということです。人まかせ、医者まかせでは決していい治療効果は得られません。医師から受けた説明を正しく理解して実践するか否かで、快方への道のりに大きく影響することを忘れないでください。

(取材・子川 智)

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